
「ポートレート撮影の機材を整理したい」と、重厚なバッグを抱えてご来店されたお客様がカウンターに置かれたのは、キヤノンのEF85mm F1.2L II USMでした。かつて雑誌や個人の撮影会でその美しいボケ味を駆使し、多くの被写体を魅力的に切り取ってきたというこの一本。長年メインレンズとして活躍した証である鏡筒の微細な擦れさえも、写真への情熱を感じさせる勲章のように思えました。機材のシステムをミラーレスへと完全に移行する節目ということで、次にこのレンズを愛してくれる方へバトンを渡したいというご相談でした。このレンズは、キヤノンのEFレンズラインナップの中でも「Lレンズ」の名を冠した最高峰の単焦点です。F1.2という圧倒的な明るさは、ただ背景をぼかすだけでなく、被写体を浮き上がらせるような立体感を生み出します。特に開放付近での柔らかい描写は、最新のデジタルレンズにも決して真似のできない、このモデル独自の空気感を持っています。中古市場でも依然として根強いファンが存在し、プロ・アマ問わず「一生に一度は使ってみたい」と憧れられる名作であることに疑いの余地はありません。査定において私が特に慎重に確認したのは、レンズ内部のコンディションです。85mmという大口径レンズは、構造上どうしても微細なチリが混入しやすいものですが、重要なのはカビやクモリの有無です。また、F1.2という極端に浅い被写界深度を持つレンズだからこそ、AF駆動時のピント合わせの精度や動作音もチェックしました。幸い、この個体は定期的なメンテナンスが行き届いており、駆動系も極めてスムーズ。レンズ表面のコーティングも傷一つなく美しい状態を保たれていたため、その光学性能を最大限に評価し、お客様も驚かれるほどの高値をご提示いたしました。こうした高性能レンズを所有されている方に、長く状態を保つための秘訣としてお伝えしているのが、湿度管理の重要性です。大口径レンズはレンズ群が複雑に配置されているため、一度内部に湿気が入ると、カビの温床になりやすい傾向があります。長期間使用しない時期があるなら、ドライボックスや防湿庫での管理は必須です。また、もしレンズに指紋や汚れがついてしまった場合、ご自身でクリーニング液を直接噴射したり、強くこすったりするのは厳禁です。コーティングを傷めてしまうと、せっかくの描写力が台無しになってしまいます。汚れが気になったら、そのままの状態でお持ちいただくのが、査定額を下げない最善の選択です。査定を終え、レンズをお預かりした際、お客様から「このレンズで撮った写真はどれも宝物です」と伺い、改めて機材の持つ物語の重みを感じました。撮影スタイルが変わっても、その機材が残した記憶は決して消えることはありません。難波という土地で、私たちはこれからも皆様の愛着ある機材と真摯に向き合っていきます。もしご自宅の防湿庫で眠っているレンズやカメラがございましたら、ぜひ一度当店のカウンターへお持ちください。その機材が持つ価値を、プロの目で精一杯評価させていただきます。


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